AIエージェントが便利になるほど、次に重要になるのが「社内の情報や業務ツールと、どうつなぐか」です。そこで注目されているのが、MCP(Model Context Protocol)です。
MCPは、AIと外部システムを接続するための共通規格です。CodexやClaude CodeなどのAIエージェントが、文書、データベース、開発ツール、業務アプリを扱う際の共通の接続口になります。ただし、接続できることと、安全に運用できることは別です。この記事では、仕組みと活用例に加え、導入前に決めておきたい権限や承認の考え方まで整理します。
- MCPは、AIアプリと外部のデータ・ツール・業務フローをつなぐオープンな共通規格
- CodexとClaude Codeは、MCPを通じて第三者のツールや社内向けシステムに接続できる
- MCP自体が安全性を保証するわけではなく、接続先の信頼性、権限、承認、記録の設計が必要
- 最初は「一つの業務・読み取り専用・人が確認」の条件で小さく試す
なぜ今、MCPが注目されているのか
これまでAIに社内情報を使わせるには、サービスごとに個別の連携機能を開発する必要がありました。文書管理、顧客管理、データベースなど、接続先が増えるたびに異なる仕組みを用意するため、開発と保守が複雑になりやすい課題がありました。
MCPは、その接続方法を標準化しようとする取り組みです。2024年にAnthropicが公開し、その後は複数の主要AI製品や開発ツールへ対応が広がりました。2025年12月にはLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈され、特定企業だけに閉じないオープンな基盤として運営されています。[1][2]
接続方法を共通化
AI製品ごとの個別開発を減らし、同じ考え方でデータや機能を提供できます。
情報と操作をつなぐ
資料を読むだけでなく、許可された範囲で検索や登録などの操作も扱えます。
接続先を再利用しやすい
規格に対応したAIアプリ間で、同じMCPサーバーを活用しやすくなります。
選択肢が広がる
公式・社内開発を含む接続先が増え、業務に合う構成を選びやすくなります。
MCPとは
MCPは、AIアプリケーションを外部システムへ接続するためのオープン標準です。公式ドキュメントでは、ローカルファイルやデータベースなどの「データ」、検索や計算などの「ツール」、再利用可能な指示などの「ワークフロー」へAIがアクセスするための仕組みと説明されています。[3]
イメージとしては、AI専用の共通コネクターです。たとえばAIに「今月の問い合わせ傾向をまとめて」と依頼したとき、MCPを通じて問い合わせ管理システムを検索し、必要な記録を読み、集計結果を返す流れを構築できます。
MCPを構成する3つの役割
MCPは、ホスト、クライアント、サーバーという3つの役割で構成されます。ホストが全体を管理し、接続先ごとのクライアントを通じてMCPサーバーと通信します。[4]
AIアプリ
CodexやClaude Codeなど、利用者の依頼を受けて接続全体を管理します。
接続を維持する窓口
各MCPサーバーと一対一で接続し、利用できる機能やデータを受け取ります。
機能を提供する側
業務システムやデータを、決められた形式でAIへ提供します。
MCPサーバーが提供する3つの要素
MCPサーバーは、処理を実行する「Tools」、参照情報を提供する「Resources」、定型の指示を再利用する「Prompts」を公開できます。たとえば文書管理用のサーバーなら、文書検索をTool、文書本文をResource、回答作成のひな型をPromptとして提供できます。[4]
Codex・Claude Codeではどう使うのか
CodexとClaude Codeは、いずれもMCPサーバーへ接続できます。接続後は、AIが利用可能なツールを確認し、依頼内容に応じて適切な機能を選びます。人が別の画面から情報をコピーして貼り付ける作業を減らせる点が、大きな実務上の価値です。
Codex + MCP
Codexは、MCPを通じて第三者のドキュメント、ブラウザ、Figmaなどのツールやコンテキストを利用できます。ローカルのCodexクライアントでは、コマンドや設定ファイルからMCPサーバーを登録し、ツールごとに承認方法を設定できます。[5]
Claude Code + MCP
Claude Codeは、MCPを通じて外部のツール、データベース、APIへ接続できます。ローカル接続とリモート接続に対応し、設定を個人・プロジェクト・組織の範囲で管理できます。[6]
業務で考えられる活用例
MCPの価値は、AIに接続先を増やすことではなく、必要な情報へ安全に到達し、業務の流れを短くすることにあります。地域企業や自治体では、次のような活用から検討できます。
規程・手順書の横断検索
指定した文書だけを検索し、根拠となる箇所とともに回答案を作成します。
問い合わせ対応の支援
過去の対応記録やFAQを参照し、分類、回答案、確認事項を整理します。
集計・分析の下準備
読み取り専用のデータベースから必要な情報を取得し、集計や報告の材料を作ります。
開発・保守作業の効率化
仕様、課題管理、エラー監視を横断し、修正案や確認手順をまとめます。
安全に導入する4つのステップ
「便利そうなMCPサーバーを見つけたから接続する」だけでは、業務導入として不十分です。先に業務目的と許可範囲を決め、確認可能な形で試します。
対象業務と成果物を一つに絞る
「規程を探して回答案を作る」など、使う情報、処理、最終成果物を具体化します。接続すること自体を目的にしません。
接続先と提供元を確認する
誰が運営するMCPサーバーか、どの情報へアクセスするか、データがどこへ送られるか、更新が継続されているかを確認します。
最小権限と承認点を設定する
最初は読み取り専用とし、対象フォルダやデータを限定します。登録、送信、削除などの操作には人の承認を設けます。
記録を残して評価する
参照した情報、呼び出したツール、出力、修正内容を確認し、時間短縮だけでなく正確性や見落としも評価します。
導入前に押さえたいリスク
MCPは接続の規格であり、接続先のプログラムが安全であることを自動的に保証するものではありません。公式のセキュリティ指針でも、ローカルMCPサーバーによる任意コード実行、データ流出、過剰な権限、認証情報の不適切な扱いなどが具体的なリスクとして挙げられています。[7]
- 信頼できないサーバーを実行しない 提供元、公開コード、更新履歴、利用者の報告を確認し、安易なワンクリック導入を避けます。
- 読み取りと書き込みを分ける 閲覧だけで足りる業務に、更新、送信、削除の権限を与えないようにします。
- 認証情報を設定へ直書きしない APIキーやトークンは、環境変数や認証機構を使い、共有ファイルへ残さないようにします。
- 重要操作は人が承認する 外部送信、契約、支払い、個人情報の更新など、影響が大きい処理は自動実行させません。
リモート接続では認証と権限範囲の設計も重要です。MCPの認可仕様は、アクセストークンをMCPサーバー側で検証し、権限のない利用者へデータを返さないことを求めています。[8]
まずは「読み取り専用」から
最初の実証では、AIに何かを実行させるより、必要な情報を探し、整理し、下書きを作る範囲から始めるのが現実的です。たとえば、公開情報や機密性の低い手順書を対象に、回答案と参照元を提示させ、人が確認する流れです。
小さな範囲で接続の安定性、回答の正確性、権限の妥当性を確かめた後に、対象データや操作を段階的に広げます。MCPを「何でもつなぐ技術」ではなく、「AIに渡す情報と行動を管理する接点」として設計することが、継続的な活用につながります。
参考資料
- Anthropic, Introducing the Model Context Protocol
- Anthropic, Donating the Model Context Protocol and establishing the Agentic AI Foundation
- Model Context Protocol, What is MCP?
- Model Context Protocol, Architecture overview
- OpenAI, Model Context Protocol for Codex
- Anthropic, Connect Claude Code to tools via MCP
- Model Context Protocol, Security Best Practices
- Model Context Protocol, Authorization